FX相場は唯一未来予知に迫るか、という可能性について
果たして未来予知は出来るか
なんて聞き飽きた論争かも知れない。
「出来るわけがない」。
このことについては誰もが口を揃えるだろう。
未来予知については今現在は不可能事象である。
気象予報さえ1週間先の天気を外す。
これについては理系学生の立場からフォローしておくが、天気予報は物理的に限界があるらしい。
大気はカオス的振る舞いをする。
そもそも天気予報のような未来予測は現時点の情報(初期値)にちょっと付け足して、微小時間先の状態を予測する。
さらにその状態にちょっと付け足してさらにその微小時間後の状態を予想する。
そうやって何日か先の予想が出来ることになる。
漸化式的な計算をコンピュータを用いることでN回繰り返すのだ。
しかし、Nというのは10や20じゃない。
10億100億で済むかもわからない。
(※進める微小時間をどれだけ細かく取るかによる)
(※細かくすれば予想精度は上がり、粗くすればNを小さくできる)
つまり、Nを大きく取ることで初期値の影響を指数関数的に受けることになる。
(気持ち悪い表現だが目をつぶって頂きたい)
カオスと言うのは初期値が0.000000001違うだけでN回目の結果が全く異なる複雑系を意味する。
初期値を本当に少しだけずらしてN回の計算を繰り返すと、最初は黒一本だったグラフが全てバラバラの結果に開いた事がわかる。
これがカオスという性質である。
初期値に関して敏感なのだ。
天気予報の初期値を正しく見積もることは難しいだろう。
気圧は場所が数cmズレただけでも違うし、気温も然りだ。
風が山にあたって吹き返されるとして、山の測量データには数ミリの誤差がある。
この数ミリの誤差でさえN回の反復計算で結論をまったく異なったものにする。
大気というカオス的な粒子と測量という物理的な限界から今の計算モデルでは天気の長期予報は難しい。
気象庁はそれでも、この50本の平均を取ることで予測の誤差を均そうという努力をしているらしい。
アンサンブル予報という。
さて、前置きが長くなったが、数学(あるいは物理)的に未来の予知は難しい事が分かる。
そこでFXの為替相場について見てみると面白い。
為替はファンダメンタルズ要因により上下する。
ところが、テクニカル分析で利益を得る人がいる。
ファンダメンタル的な事情を知らなくても、チャートの未来が見えるわけである。
7年だか8年だか周期で暴落が起こる。
だからそろそろ暴落が来てもおかしくないと、去年から言われていた。
暴落には原因がある。
リーマンショック然り、東日本大震災然り、チャイナショック然り。
そろそろ世界規模で重要な政治的・経済的不安が起こるだろうというのが市場の予想である。
もっと言えば、ドル円が少し前にここ数ヶ月サポートされてきたラインを割り込んで下落トレンドを開始した。
今現在の様子を見ても、いったん戻るかに思えたドル円もグッと押されて下降トレンドの目線が強い。
個人的にはまだしばらく下落トレンドが続きそうだと見ている。
そして、ドル円が下落するにはチャートの形だけではなく、ファンダメンタルも必要なのである。
なにか円高になる材料がこれから先にあるはずなのだ。
しかも今回の下落は大きい。
さらに下げるとなると相当な材料のはずだ。
そういう目線で最近の政治情勢を見てみると、
「安倍総理辞任じゃね」
とまあ、こんな想像がたつのである。
これまで内閣総理大臣が内閣を解散する前には円高になっている。
市場の反応は先打ちになることが多いので、2014年12月第3次安倍内閣発足時は衆議院解散を新聞が報道するおよそ1ヶ月前10月15日にドル円は底を打ち、わずか二週間で4円の円高になっていた。
衆議院解散が報道された後はみるみる円安が進んで2ヶ月足らずで16円もの上げ幅を獲得した。
これは安倍内閣継続期待によるものだろう。
それでも解散の報道前に一度大きく円高に触れているのは先行き不透明のリスクオフであろう。
日本であれ、米国であれ国のトップが変わるというイベントには手堅く控える動きがみられるのだ。
(米国のトップが変わって円買いになる様子は理解しやすいが日本のトップが変わる時にも円買いになる理屈はなかなか理解しがたいだろう)
(ググれば他者様が丁寧に解説しているので詳細はそちらに任せる)
前回は強烈な景気回復政策が期待されたから解散後第4次安倍内閣を期待して円高より円安の反発が広がった。
今回は2か月前と比べると8円も円高になっている。
もうすぐトランプ大統領誕生時のレートも見つめている。
1年4ヵ月ぶりの安値を更新しつつあるのだ。
安倍総理辞任になれば次期総理大臣は誰になるのだろうか。
安倍さん以上に円安政策を推し進める人はいるのだろうか。
市場の反応を見ている限りその答えは『NO』である。
FX相場はこう見ると唯一の未来予知可能性を秘めているのではなかろうか。
もちろん、天気をチャートから読み取ることは出来ないが、政治情勢や経済事情に関してはかなり有力な手法ではないか。
未来予知というオカルティックな内容だけに理系の血が騒ぐ。
もし、チャートがテクニカル分析的な判断によって未来予知を可能にするならば天気予報やその他の未来予知についてもなんらかのチャート分析的な手法で新しい観点から未来予知の可能性に迫ることが出来るのではないか、と。
数学界の限界に迫るのは相場かも知れない。
ちなみに相場はフラクタルである、という言葉にある『フラクタル』とは数学用語であり、セルオートマトンの知がある人にとってはN回反復計算の結果、カオスになるかフラクタルになるか、と言う分岐が美しく存在する。